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こんにちは、みゆです。とうとうここまで来ちゃった。震える手で颯太に「ちゃんと話したいことがある」って送って、二人の河川敷で会う約束をした、前回。
子どもの頃から、何かあるといつもこの土手だった。だからこそ――今日は、逃げないって決めてきたの。
夕方の河川敷は、オレンジ色に染まってた。土手の草をかきわけて行くと、颯太はもう先に来てて、川を眺めてた。
その横顔を見た瞬間、心臓がばくばく鳴って、もう帰りたくなった。これ、ほんとあるある。でも、足は止めなかった。
「颯太」って呼ぶと、振り返って笑った。「珍しいな、お前から呼び出すなんて」
隣に座る。川がきらきらして、なんにも言葉が出てこない。沈黙って、こんなに重いんだ。
こういうとき、わたしいつも友達に言ってきたんだよね。「最初の一言だけ、用意していこ」って。
だから、震える声でちゃんと言った。「あのね、最近わたしが変だったの、ちゃんと理由があって」
* * *
颯太はこっちを見ないで、川を見たまま「うん」って待ってくれた。せかさないの、ずるいくらいやさしい。
わたしは膝の上でぎゅっと手を握って、息を吸った。応援団長として何百回も言ってきた言葉が、今、自分の背中を押す。
「颯太のこと、好き。幼なじみとかじゃなくて、ちゃんと、好きになっちゃった」
言い切った瞬間、世界の音が消えた気がした。あー、言っちゃった。もう取り消せない。
こわくて颯太の顔が見れなくて、川ばっかり見てた。心臓、口から出そう。
そしたら――颯太が、ふっと笑った気配がした。「やっと言った」って。
え。やっと? 顔を上げると、颯太が照れたみたいに頭をかいてた。
「実は、ずっと前から気づいてほしかったんだよな。俺の方が」
「……は?」わたし、たぶんすごい間抜けな顔してた。
* * *
颯太は言った。「好きな人いるって、前に言っただろ。あれ、お前のことだよ」
覚えてる。第1話のあのとき。「お前には言わない」って意味深に笑ってた、あれ。ぜんぶ、わたしだったの?
「鈍感なフリして見守るの、けっこう疲れた」って颯太が笑うから、わたし、もう涙が止まらなくなっちゃった。
「だって、わたし、人の恋ばっかり応援して、自分のはド素人で」って、ぐちゃぐちゃ言うわたしに、颯太は言った。
「知ってる。お前がそういうやつだって、ずっと隣で見てきたから」
いちごミルク、いつも黙って差し出してくれてたの。あれ、ぜんぶそういうことだったんだ。気づけよ、過去のわたし。
夕日がほとんど沈んで、空が紫色になってた。颯太がそっと手を差し出して、「これからは、幼なじみじゃなくていい?」って。
わたしはぐしゃぐしゃの顔で、何度もうなずいた。「うん。うん、よろしくお願いします」
幼なじみが、恋人になった瞬間。長かったよ、ほんとに。
* * *
あとでちなに報告したら「遅すぎ。でも、おめでと」って、らしい一言が返ってきた。母にも電話した。「ちゃんと、自分のこと応援できたね」って言われて、また泣いた。
あかりちゃんにもちゃんと話したよ。逃げずに、自分の言葉で。彼女、ちょっと泣いてたけど「みゆ先輩らしいです」って笑ってくれた。まっすぐな子は、やっぱり強い。
わかったことがあるの。「嫌われたくない」「今さら意識されたくない」って思うのは、本気で好きだからこそなんだって。こわさは、ずっと本気のサインだったんだよね。
人の恋は全力で応援できるのに、自分の恋には臆病になっちゃう。わかる〜って人、きっと多いと思う。わたしもそうだったから。
でもね、大丈夫、大丈夫。今まで誰かにかけてきたやさしい言葉は、ちゃんと自分にもかけていいの。最後に自分を救うのは、いつかの自分の言葉だったりするから。
だからわたし、これからも恋の応援団長やります。今度はちょっとだけ、自分の恋も応援できる団長として、ね。
もしあなたが今、自分の気持ちの前で立ち止まってるなら――最初の一言だけ、用意してみよ? そして、ひとりで抱え込まないで、一緒に前を向こう。
これが、みゆの恋の話。読んでくれて、ありがとね。(完)
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― 沙織(恋ことば)







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