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颯太を好きって自覚しちゃって、いつもみんなに言ってる「行動あるのみ!」が全部ブーメランで返ってくる毎日。理屈はわかるのに、足が一歩も動かない。あなたも、そういう「わかってるけど無理」ってあるでしょ?わかる〜!
そんなある日、わたしの恋に黒船がやってきたの。
* * *
サークルの練習を見学に行ったときだった。颯太のまわりに、見慣れない女の子がちょこんといたの。ショートヘアで、笑うとえくぼができる、すっごく可愛い子。
「みゆ先輩、はじめまして!あかりです」
元気いっぱいに頭を下げてくる子。後輩のあかりちゃん。颯太が「最近入った一年」って軽く紹介してくれたんだけど――わたし、その瞬間に気づいちゃった。
あかりちゃんが颯太を見る目が、ちょっと特別だったの。恋する子の目って、応援団長やってると一発でわかるんだよね。
「颯太先輩、さっきのプレーすごかったです!」
「お、見てた?」
「ずっと見てました!」
その「ずっと」に、わたしの心臓がぎゅっとなった。あれ、なにこの感じ。胸の奥が、しゅん…って冷たくなる感じ。
* * *
帰り道、わたしは一人でぐるぐる考えてた。
あかりちゃん、いい子なんだよ。素直で、まっすぐで、颯太のこと好きって全身で言ってる。嫌いになる要素がひとつもない。それがまた、つらい。
もし、いつものわたしだったらどうする?――決まってる。「行こう、あかりちゃん!その気持ち、伝えなきゃもったいないよ!」って、全力で背中を押してたはず。
でも今は、押せない。だって、押した先にいるのはわたしが好きな人だから。
「うわ、最低じゃんわたし」
思わず声に出ちゃった。誰かの恋を心から喜べない自分なんて、初めてで。ずっと「応援団長」やってきたのに、こんなにちっちゃい気持ちが自分の中にあったなんて、知らなかった。
* * *
その夜、ちなに電話した。「黒船きた」って言ったら、ちなは一瞬で察してくれた。
「で、その子に勝てる気しないって落ち込んでるんでしょ」
「うっ…なんでわかるの」
「みゆの声、わかりやすすぎ」
ちなはちょっと笑って、それからまじめな声になった。
「あのさ、みゆ。あかりちゃんが颯太を好きでも、みゆが颯太を好きな事実は消えないでしょ?恋って、早い者勝ちでも、譲り合いでもないんだよ」
その言葉、ぐさっときた。わたし、いつのまにか「あとから好きになった気がするから遠慮しなきゃ」みたいな気持ちになってたんだ。
「でもね、ちな。わたし、人の恋は応援できるのに、自分のことになると急にこわいの。こんな自分、ださくない?」
「ださくないよ」ちなは即答した。「本気だからこわいの。それ、みゆが昔みんなに言ってたことじゃん」
――こわさは、本気のサイン。
そうだ、わたしが言ったんだ。自分で言っといて、いざ自分の番になると忘れてる。あなたにもあるでしょ、自分の言葉が一番効くやつ。これ、ほんとあるある。
* * *
電話を切って、わたしはひとつだけ決めた。今すぐ告白とか、そんな大ジャンプはまだ無理。でも、できることはある。
「比べて落ち込む」のをやめて、「自分の気持ちを、ちゃんと自分で認める」こと。これって地味だけど超大事で、ここを飛ばすと一生ふわふわしたまんまなんだよね。
あかりちゃんと比べて「勝てない」って数えるんじゃなくて、わたしはわたしの「好き」を、まずわたしが大事にする。ね、やってみよ?って、自分に言い聞かせた。
そんなことを考えてたら、颯太からLINEが来た。
「今日、見学来てくれてたろ。なんか元気なかったlike?大丈夫か」
……見てたんだ。わたしが隅っこで黒船にやられてたの、気づいてたんだ。颯太って、ほんと変なとこ鋭い。
「大丈夫、大丈夫!ちょっと考えごとしてただけ〜」って返したけど、画面の向こうの颯太を思い浮かべたら、胸がきゅっとなった。
黒船は来た。心は、人生で一番ぐらぐら揺れてる。でも――不思議と、逃げたいとは思わなかった。
揺れるってことは、それだけ本気ってこと。わたしの恋、やっと「他人ごと」じゃなくなってきたんだ。
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― 沙織(恋ことば)






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