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あかりちゃんに「応援してほしい」って言われて、笑顔で受け流しちゃったわたし。応援できない自分が、ほんとに嫌で。でもね、それって本気の証拠なんだって、少しずつ分かってきたところ。
……うん、分かってはきたんだけど。問題はここから。気持ちを認めるのと、いつも通りに振る舞えるのは、まったくの別問題だったの。これ、ほんとあるある。
「とにかく、颯太の前ではいつも通り!」って意気込んだあの日。今思い出しても、頭抱えちゃう。だってわたし、見事に大爆発したんだから。
* * *
その日、サークルの練習を見にいったの。いつもならベンチに座って「ナイシュー!」って叫ぶだけの簡単なお仕事。なのにその日のわたしは、開始五分で挙動不審だった。
颯太がこっちに歩いてくる。それだけで心臓がバクバク。「よ、みゆ」って手を上げる颯太に、わたしが返した言葉が、「お、おう。げんき?」。
げんき?って。毎日会ってる幼なじみに。颯太、思いっきり吹き出してた。「なんだそれ、初対面か」って。もう、顔から火が出るかと思った。
「いやっ、ほら、ちゃんと体調管理してるかなって! アスリートだもんね!」
必死にフォローしたけど、サークルのサッカーをアスリート扱いしたせいで、余計に変な空気に。焦って盛ると、だいたい墓穴を掘る。これ、覚えといて。
* * *
極めつけは、その後のドリンク事件。颯太がいつもみたいに、いちごミルクをぽいって渡してくれたの。「ほら、お前の」って。
これがいつものわたしなら、「あざ〜す!」で終わる話。なのにその日は、受け取る手が震えちゃって、見事にパックを落とした。地面でぱしゃっ。いちごミルクが、悲しく広がっていく。
「うわ、大丈夫か?」って颯太がしゃがんだ瞬間、わたしも同時にしゃがんで――おでこ、ゴチン。漫画みたいに頭ぶつけた。痛いのと恥ずかしいので、もう涙目。
「みゆ、お前さ」颯太が、ちょっと真顔になった。「最近、変じゃね?」
ドキッとした。バレた、って思った。でも認める勇気なんて、まだあるわけなくて。「変じゃないし! いつも通りだし!」って、思わず強く言い返しちゃった。
言ってから後悔した。だって、いつも通りじゃないのは、誰よりわたしが知ってる。颯太、ちょっと黙って、「……そっか」って小さく言った。その横顔が、なんだか寂しそうで。
* * *
気まずいまま、その日は別れた。家に帰って、ベッドに倒れ込んで、ひとり反省会。「うまくいかないよ〜!」って枕に顔を埋めて叫んだ。
いつも通りにしようとすればするほど、いつも通りから遠ざかる。これって、矛盾の極み。「自然体でいよう」って力むこと自体が、もう不自然なんだよね。あの夜のわたしに、誰か教えてあげてほしかった。
でもさ、ひとつだけ気づいたことがあるの。颯太の「変じゃね?」の声が、責めてるんじゃなくて、心配してくれてる声だったってこと。
あの寂しそうな横顔。あれは、わたしが壁を作ったから出た顔なんだ。颯太は、ずっとこっちを見てくれてた。突き放したのは、わたしのほうだった。
ちなにLINEで全部報告したら、即レス。「あんた、空回りの天才やな(笑)」って。ひどい。でも続けて、こう来た。「でも颯太、ちゃんと気づいてんじゃん。逃げてんのはみゆだけ」って。
……グサッ。図星すぎて、返す言葉もなかった。相手は待っててくれてるのに、勝手に怖がって逃げ回ってたのは、わたし自身だったの。
もしあなたが今、好きな人の前でぎこちなくなっちゃうなら。安心して、それ、わたしも通った道。空回りは、本気のあかし。下手くそでいいの。だって、どうでもいい相手の前では、人は空回りなんてしないんだから。
枕に顔を埋めたまま、わたしはぽつりとつぶやいた。「ごめんね、颯太」って。明日、ちゃんと顔を見て話そう。そう思った瞬間、また心臓がうるさく鳴り始めた。
でも、もう逃げたくなかった。あの寂しそうな横顔を、これ以上見たくなかったから。逃げる勇気より、向き合う勇気のほうを、わたしは選びたい。まだ手は震えてたけど、ね。
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― 沙織(恋ことば)






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