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雨のカフェで出会い、正反対の“恋ことば”が実はバトンのようにつながっていると気づいた私たち。互いの痛みを打ち明け合って、みゆちゃんとの距離はぐっと縮まりました。
「二人でなら、もっと多くの人に届くかも」――その言葉が、私の胸にずっと残っていたんです。
あの日から、私はよく美月に会うようになりました。親友って、こういうとき本当にありがたいですよね。
「ねえ美月、ちょっと聞いてほしいことがあって」
行きつけのカフェで、私はマグカップを両手で包みながら、少しだけ緊張していました。正直に言うと、当時の私はまだ半信半疑で、口に出すのが怖かったんです。
「実はね、Xで知り合った子と、恋の相談に答える場所を作れないかなって、考えてて」
言い終えた瞬間、美月がぱっと顔を上げたのを覚えています。
「え、沙織が? やるじゃない」
その声があんまり嬉しそうで、私の方が驚いてしまいました。
「でも、私なんかが誰かの相談に答えていいのかなって……失恋して、ぐちゃぐちゃになってた頃の私を知ってるでしょ」
そう言うと、美月は少し首をかしげて、こう返してくれたんです。
「だからいいんじゃない。あのときの沙織を知ってるから言うけど、あなた、ちゃんと立ち直ったよ。その言葉を待ってる人、きっといるよ」
* * *
あなたにも、覚えがありませんか。誰かの「いいじゃない」の一言が、閉じかけた扉をそっと押してくれる瞬間。
私はあのとき、自分でも忘れていた過去の自分に、少しだけ許された気がしたんです。
同じ頃、みゆちゃんも颯太さんに打ち明けていたと、あとから聞きました。
「颯太に話したらね、『みゆらしいじゃん』って笑ってくれたんです」
電話越しのみゆちゃんの声は、いつもよりちょっと弾んでいました。
「私が臆病だった頃も、颯太は待っててくれた人だから。だからこそ、背中を押す言葉の重さが分かるんだって、そう言われて」
あー、それ、すごく分かります。押す側も、昔は押される側だったんですよね。
私もそうでした。誰かに寄り添うって、自分が寄り添ってもらった記憶があるからできることなのかもしれません。
* * *
週末、私とみゆちゃんは、あの雨の日と同じカフェで待ち合わせました。今度は晴れていて、窓から差す光がテーブルを温めていたのを覚えています。
「美月さん、応援してくれたんですね」
「うん。みゆちゃんも、颯太さんが背中を押してくれたって」
私たちは顔を見合わせて、なんだか照れくさく笑ってしまいました。
「不思議ですよね」とみゆちゃんが言いました。「私たち、誰かに押してもらった言葉を、今度は誰かに渡そうとしてる」
その言葉に、私は胸の奥がじんわり温かくなったんです。
もらった言葉って、ちゃんと残るんですよね。忘れたつもりでも、いざというときに支えてくれる。
「ねえ、みゆちゃん」と私は切り出しました。「正直、私一人だったら、きっとまた立ち止まってた。でもあなたがいると、動ける気がするの」
「私もです」とみゆちゃんは即答しました。「私、勢いだけで突っ走っちゃうから。沙織さんが『まず立ち止まろう』って言ってくれると、安心するんです」
正反対な私たちが、こうして補い合っている。それがなんだか、運命みたいに思えて仕方なかったんです。
* * *
その日、私たちは初めて、本気で「場所を作る」という話をしました。
落ち込んでいる人には、まず私が寄り添う。前を向けそうな人には、みゆちゃんが背中を押す。
「一人で答えるより、二人でなら もっと寄り添えますよね」
みゆちゃんのその一言に、私は深くうなずきました。
過去の恋があったから、今の言葉がある。傷ついた日も、臆病だった夜も、全部むだじゃなかったんだと、そのとき初めて心から思えたんです。
あなたにも、いつか「あの経験があってよかった」と思える日が来ると、私は信じています。
帰り道、みゆちゃんが小さく手を振りながら言いました。
「名前、考えなきゃですね。私たちの場所の」
「うん。次に会うときまでに、考えておこうか」
夕暮れの空の下、二人分の足音が同じリズムで響いていて――なんだか、始まりの合図みたいでした。
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― 沙織(恋ことば)






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