こんにちは、みゆです。これから話すのは、わたしの恋の物語。って言っても、当時のわたしは「自分の恋」なんて、まるで他人事だったんだけどね。
あの頃のわたしは、自分のことを「恋の応援団長」だって本気で思ってた。友達の恋愛相談に乗って、背中を押して、みんなが笑顔になるのを見るのが、もう三度のごはんより好き!
「みゆに相談すると、なんか前向きになれるんだよね」って言われると、心の中でガッツポーズ。これ、ほんとあるある——って、わたしだけかな?
* * *
その日も、大学のカフェテリアで後輩のさやかちゃんから相談を受けてた。「好きな先輩がいるけど、話しかける勇気が出ない」って、よくあるやつ。
「わかる〜!話しかけるの、いちばん心臓バクバクするとこだよね」
わたしがそう言うと、さやかちゃんは「みゆ先輩でもそうなんですか?」って目をまんまるにした。
「いやいや、わたしの話じゃなくて!でもね、コツあるよ」
身を乗り出して、わたしはとっておきの一言を伝えた。
「いきなり気持ちを伝えようとしないこと。まずは『おはようございます』だけでいいの。挨拶って、相手の心のドアを軽くノックする感じ。それを三日続けたら、四日目には絶対、向こうから何か返ってくるから」
さやかちゃんは「三日……やってみます!」って、ぱあっと顔を明るくした。その顔を見るのが、たまらなく好きなんだよね。
* * *
「相変わらず、人の恋にだけは全力だな」
後ろから、聞き慣れた声がした。振り向かなくても誰だか分かる。颯太だ。
颯太は、わたしの幼なじみ。同じ大学で、サッカーサークル所属。なんていうか、空気みたいに、ずーっと隣にいるやつ。
「人のじゃないよ、後輩の本気の恋だよ。颯太も困ってる子いたら紹介してね、相談乗るから」
「お前、誰の応援団長なんだよ」って笑いながら、颯太はわたしの隣に当たり前みたいに座った。
その手には、なぜかわたしの好きないちごミルクが二本。一本を、すっと差し出してくる。
「はい。お前、相談乗ると喉カラカラになるだろ」
「……なんで知ってんの」
「何年の付き合いだと思ってんだ」
わたしは「ありがと」って受け取って、ちゅーっと飲んだ。冷たくて甘くて、なんかほっとする味。こういうの、当たり前すぎて、当時は何とも思ってなかったんだよね。
* * *
「ね、颯太ってさ、好きな人とかいないの?」
軽い気持ちで聞いてみた。これも、いつもの会話のつもりだった。
颯太は一瞬、ストローをくわえたまま止まって、それからふっと窓の外を見た。「いるよ、たぶん」って、いつもよりちょっと小さい声で。
「えっ、誰誰!?言って言って、応援するから!」
わたしが食いつくと、颯太は「お前には言わねえ」って、なぜか苦笑いした。
「なんでよ〜!わたし、恋の応援団長だよ?大丈夫、大丈夫!誰にも言わないし、ちゃんと背中押すから」
「……そういうとこだよ」
「ん?なんか言った?」
「なんでもない」
颯太はいちごミルクを飲み干して、立ち上がった。「サークル行ってくる。お前も、自分の心配もしろよ」って、わたしの頭をぽんと軽く叩いて。
「わたしは大丈夫!恋なんて、当分しないし〜」
そう言って手を振ったわたしを、颯太はちょっとだけ振り返って、何か言いたそうにして、結局笑って去っていった。
* * *
一人になったカフェテリアで、わたしはぬるくなったいちごミルクの最後の一口を飲んだ。
あのときは、本当に気づいてなかった。颯太が見ていた「窓の外」のことも、頭をぽんとされたときの、胸のあたりのほわっとした感じも。
人の恋は、手に取るように分かるのに。自分のことになると、わたしってば、びっくりするくらいポンコツなんだよね。
もしあなたが今、誰かの相談には乗れるのに自分のことはさっぱり、って思ってるなら——大丈夫、大丈夫。それ、わたしも通った道だから。ね、これから一緒に、その理由を見つけにいこ?
これは、恋の応援団長が、生まれて初めて自分の恋に振り回される物語。次に会うとき、わたしの心臓は、もう少しだけ大きく跳ねることになる。





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