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既読はつくのに返事は来ない夜、スマホを何度も見てしまう――そんな経験、ありませんか。あるいは、失恋のあとで「自分が何を好きだったのか」さえ分からなくなってしまった人もいるかもしれません。
この物語は、そんなふうに言葉で傷つき、言葉に救われた私(沙織)が、SNSの画面越しに「言葉の友」みゆさんと出会うまでのお話です。この第1話を読むと、顔も名前も知らない相手と心が通じ合う瞬間がどんなふうに訪れるのか、その始まりが分かります。
失恋のあと、どうやって「自分」を取り戻した?
結論から言うと、恋以外で好きだったことを一つずつ拾い直すことでした。数年前、私は恋を一つ、静かに終えました。好きな人に嫌われたくなくて、自分の気持ちをどんどん消していって――気づけば、自分が何を好きだったのかも分からなくなっていた頃のことです。
あー、それ、すごく分かります、って思ってくれたあなた。大丈夫、私も昔まったく同じことで悩みました。
だからその恋が終わったあと、私は少しずつ「自分」を拾い直していきました。好きだったカフェ、後回しにしていた読書、ひとりで観る映画。取り戻すって、案外時間がかかるものですよね。焦らなくて大丈夫。まずは小さな「好き」を一つ思い出すところから、で十分なんです。
* * *
なぜ自分の弱さを綴った言葉が、誰かに届いた?
不思議なことに、人を励ますつもりのない「弱いままの言葉」ほど、誰かの胸に刺さるんです。そんなある夜、なんとなくXを開いて、私はぽつりと言葉を落としました。
「嫌われたくなくて自分を消していた頃の私へ。無理して笑わなくて、いいよ。」
誰かに届くとも思っていませんでした。ただ、あの頃の自分に手紙を書くみたいな気持ちで、指を動かしていただけです。
けれど翌朝、通知が小さくいくつも灯っていて。「救われました」「これ、今の私です」――知らない誰かの声が、画面の向こうから返ってきていました。
人を励ますつもりなんてなかったのに、自分の失敗の中にこそ、誰かに届く言葉があるんだって、そのとき初めて知ったんです。それから私は、少しずつ言葉を綴るようになりました。強がらずに、弱いままの言葉を。
* * *
「言葉の友」みゆさんとは、どんな人だった?
ひとことで言えば、私とは温度の違う言葉を綴る人でした。私の投稿に、いつからか毎回のように「いいね」をくれる人がいたんです。アイコンは、青い空にひとひらの雲。名前は、みゆさん。
その人の投稿を初めて読んだとき、私は思わず画面をスクロールする手を止めました。
「臆病でもいい。でも、自分の恋にも、前を向いていいんだよ。」
私の言葉が「立ち止まっていいよ」なら、みゆさんの言葉は「もう一歩、踏み出していいよ」。温度が、少し違うんです。私のはそっと肩に置く手のひらで、みゆさんのは背中を押す手のひら。
でも、根っこにあるものは同じでした。「あなたを、大切にしてほしい」――それだけは、二人とも一緒だったんです。
私はそのとき、こんなことを思っていました。もしかして、この人も、昔は前を向くのが怖かったんじゃないかな、って。だって、本当に一度も臆病になったことがない人は、「臆病でもいい」なんて、あんなにやさしく言えないですから。
* * *
顔も知らないまま、どんな言葉を交わしていた?
短い、けれど一日を支えてくれるようなリプのやりとりでした。気づけば私たちは、顔も本名も知らないまま、互いの言葉にリプを送り合う仲になっていたんです。実際のやりとりは、こんな感じでした。
言葉の友、とでも言えばいいのでしょうか。会ったことはないのに、この人になら分かってもらえる気がする。あなたにも、そういう相手がいたりしませんか。もし今「返信がそもそも来ない」で悩んでいるなら、それはまた別の原因かもしれませんが――言葉が続く相手というのは、たしかに存在するんです。
物語が動き出した、あの夜のリプとは?
きっかけは、みゆさんのたった一つの投稿でした。そしてある夜のこと。みゆさんが、こんな投稿をしていたんです。
「昔の私は、自分の恋のことで精一杯だった。でも今は、誰かの恋を応援できる私でいたいな。」
その言葉を読んだ瞬間、私の胸の奥が、ふっと熱くなったのを覚えています。だって、私もまったく同じことを考え始めていたから。あの頃の私を救ってくれた言葉を、今度は私が、誰かに手渡す番なんじゃないか、って。
傷ついた自分を抱きしめられるようになった今なら、きっと、誰かの痛みにも寄り添える。そんな気がしていたんです。
私は少し迷ってから、みゆさんの投稿に、いつもより長いリプを送りました。
「その気持ち、すごく分かります。私も、今度は誰かの力になれたらって、思っていました。」
送信ボタンを押したあと、なぜだか少しだけ、胸がどきどきしていました。
嫌われたくなくて自分を消し、好きなものすら分からなくなった。まずは小さな「好き」を拾い直すことから始まった。
あの頃の自分への手紙のような投稿に、見知らぬ誰かから「救われました」の声が返ってきた。
温度は違うけれど、根っこは同じ言葉を綴る人。毎回「いいね」をくれる相手に気づく。
「誰かの恋を応援したい」という投稿に、いつもより長いリプを送る。ここから、すべてが始まった。
* * *
この出会いは、この先どうなっていく?
結論を先に言えば、あの夜が、すべての始まりでした。画面の向こうにいた、まだ顔も知らないみゆさん。私たちが本当に出会うのは、もう少し先――ある雨の日の、街角のカフェでのことです。
でも、それはまた次のお話。あのとき交わした小さな言葉が、まさか二人の未来を動かすなんて、当時の私は、まだ何も知りませんでした。



よくある質問
Q. SNSで知り合った人と本当に心が通じ合えますか?
A. 顔や本名を知らなくても、言葉のやりとりを重ねれば深い共感は生まれます。大切なのは会う頻度より、弱さも含めて素直な言葉を交わせるかどうか。物語の沙織とみゆのように、リプの積み重ねが支えになることは実際によくあります。
Q. 失恋のあと、自分を取り戻すにはどうすればいい?
A. まずは恋以外で好きだったこと(カフェ・読書・映画など)を一つずつ再開するのがおすすめです。取り戻すには時間がかかって当然。焦らず、後回しにしていた小さな楽しみから拾い直していくと、少しずつ自分の輪郭が戻ってきます。
Q. 「恋ことば物語」は何話まであるの?
A. 全5話の連作です。この第1話は、沙織とみゆがSNSの言葉を通して出会うまでの前置きにあたります。二人が実際に顔を合わせるのは、次のお話の雨の日のカフェでのことです。
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― 沙織(恋ことば)




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