恋愛物語〜みゆの恋〜 第4話 人に贈った言葉が、そのまま自分に返ってきた午後

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前回までのあらすじ。ちなに「それ、完全に恋じゃん」って一刀両断されて、わたしはついに颯太への気持ちを自覚しちゃったの。人の恋はプロなのに、自分の恋はド素人。認めた途端、なぜか胸の奥がそわそわして眠れなくなったんだよね。

でね、自覚したからって何かが進むわけじゃないの。これ、ほんとあるある。

むしろ逆。颯太の顔が浮かぶたびに、頭の中の「恋の応援団長みゆ」が腕組みして登場するわけ。「はい、そこ! 好きならまず素直になりな!」って。

……いや、わかってるよ。わかってるんだけどさ。

自分で言ってきた言葉が、全部こっちに刺さってくるとは思わなかった。

* * *

思い返せば、わたしって今までめっちゃ偉そうにアドバイスしてきたんだよね。

後輩さやかには「好きなら行動あるのみ! 待ってても何も起きないって!」。同じゼミの子には「嫌われたくないって思ってる時点で、もう本気なんだよ?」。

うわー、過去のわたし、よく言ったわ。今のわたし、一歩も動けてないのに。

颯太からLINEが来る。「明日、学食12時でいい?」って、いつもの。

これ、前なら秒で「りょ!」って返してたやつ。なのに今は、スタンプ一個押すのに三回打ち直してる。何これ。誰だこいつ。

ここでひとつ気づいたこと。「いつも通り」って、意識した瞬間にいちばん難しくなるんだよね。無意識でできてたことが、急に資格試験みたいになる。

* * *

たまらず、ちなに電話した。もう完全に相談する側、立場逆転。

「ちな〜、わたしどうしたらいいの。颯太に普通に接せないんだけど」

「みゆがそれ言う? いつも人に『行動あるのみ』って言ってる人が?」

うっ。ど真ん中。グサッときた。

「だってさ、相手は幼なじみだよ? 今さら『好き』とか意識されたくないし、もし変な空気になったら……今までの関係まで壊れるかもじゃん」

そう、それがこわいの。生まれて初めての「臆病」ってやつ。

ちなはちょっと黙って、それからふっと笑った。「みゆさ、それ、こないださやかにかけてた言葉と真逆だよ」

「……何て言ってたっけ」

「『嫌われるのがこわいのは、その人が大事って証拠。こわさは本気のサインだよ』って」

……あー。言った。たしかに言った。めっちゃいいこと言ってたわ、過去のわたし。

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こわいって気持ちは、好きの裏返し。人に言うときはあんなにスッと出てきたのに、自分に向けると重たいんだよね。

* * *

次の日の学食。颯太は先に来てて、いつものいちごミルクをわたしの席に置いてくれてた。

「お、来た来た。今日サークルの新歓あるんだけど、みゆも顔出す?」

「あ、う、うん。行く、かも」

噛んだ。普通に噛んだ。颯太が「どした、寝不足?」って笑う。その笑顔が、もう、ずるい。

いつもなら「うるさいな〜!」って肘で小突くとこなのに、手が伸ばせない。颯太との距離が、急に世界一遠く感じる。

大丈夫、大丈夫って自分に言い聞かせながら、いちごミルクをちゅーっと飲んだ。あまい。颯太、わたしの好きなやつ、ちゃんと覚えてるんだよね。こういうとこだよ、ほんと。

帰り道、ひとりで反省会。理屈はぜんぶ揃ってるの。「行動あるのみ」「素直になりな」「こわさは本気のサイン」。教科書なら満点よ。

でも、実技がゼロ。心と体がバラバラ。

でね、わたしが今のあなたに言えるのはこれ。動けなくてもいい、まず「動けてない自分」を責めないこと。恋に臆病になるのは、ちゃんと本気だからなんだから。そこ、減点ポイントじゃないよ。

夜、布団の中で颯太のLINEをもう一回見た。「今日のみゆ、ちょっと変だったぞ?」って。バレてるし。

でもね、不思議とちょっとだけ笑えたの。あんなに人の背中ばっか押してきたわたしが、今度は自分の番で立ち止まってる。なんかさ、これも悪くないかもって。

「一緒に前を向こう」――いつも誰かに言ってきたこの言葉。今度はこれ、自分にかける番なのかもしれない。

……まだ、もうちょっとだけ、心の準備させてね。

📖 恋愛物語〜みゆの恋〜(全10話)

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― 沙織(恋ことば)

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