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前回までのあらすじ。ちなに「それ、完全に恋じゃん」って一刀両断されて、わたしはついに颯太への気持ちを自覚しちゃったの。人の恋はプロなのに、自分の恋はド素人。認めた途端、なぜか胸の奥がそわそわして眠れなくなったんだよね。
でね、自覚したからって何かが進むわけじゃないの。これ、ほんとあるある。
むしろ逆。颯太の顔が浮かぶたびに、頭の中の「恋の応援団長みゆ」が腕組みして登場するわけ。「はい、そこ! 好きならまず素直になりな!」って。
……いや、わかってるよ。わかってるんだけどさ。
自分で言ってきた言葉が、全部こっちに刺さってくるとは思わなかった。
* * *
思い返せば、わたしって今までめっちゃ偉そうにアドバイスしてきたんだよね。
後輩さやかには「好きなら行動あるのみ! 待ってても何も起きないって!」。同じゼミの子には「嫌われたくないって思ってる時点で、もう本気なんだよ?」。
うわー、過去のわたし、よく言ったわ。今のわたし、一歩も動けてないのに。
颯太からLINEが来る。「明日、学食12時でいい?」って、いつもの。
これ、前なら秒で「りょ!」って返してたやつ。なのに今は、スタンプ一個押すのに三回打ち直してる。何これ。誰だこいつ。
ここでひとつ気づいたこと。「いつも通り」って、意識した瞬間にいちばん難しくなるんだよね。無意識でできてたことが、急に資格試験みたいになる。
* * *
たまらず、ちなに電話した。もう完全に相談する側、立場逆転。
「ちな〜、わたしどうしたらいいの。颯太に普通に接せないんだけど」
「みゆがそれ言う? いつも人に『行動あるのみ』って言ってる人が?」
うっ。ど真ん中。グサッときた。
「だってさ、相手は幼なじみだよ? 今さら『好き』とか意識されたくないし、もし変な空気になったら……今までの関係まで壊れるかもじゃん」
そう、それがこわいの。生まれて初めての「臆病」ってやつ。
ちなはちょっと黙って、それからふっと笑った。「みゆさ、それ、こないださやかにかけてた言葉と真逆だよ」
「……何て言ってたっけ」
「『嫌われるのがこわいのは、その人が大事って証拠。こわさは本気のサインだよ』って」
……あー。言った。たしかに言った。めっちゃいいこと言ってたわ、過去のわたし。
こわいって気持ちは、好きの裏返し。人に言うときはあんなにスッと出てきたのに、自分に向けると重たいんだよね。
* * *
次の日の学食。颯太は先に来てて、いつものいちごミルクをわたしの席に置いてくれてた。
「お、来た来た。今日サークルの新歓あるんだけど、みゆも顔出す?」
「あ、う、うん。行く、かも」
噛んだ。普通に噛んだ。颯太が「どした、寝不足?」って笑う。その笑顔が、もう、ずるい。
いつもなら「うるさいな〜!」って肘で小突くとこなのに、手が伸ばせない。颯太との距離が、急に世界一遠く感じる。
大丈夫、大丈夫って自分に言い聞かせながら、いちごミルクをちゅーっと飲んだ。あまい。颯太、わたしの好きなやつ、ちゃんと覚えてるんだよね。こういうとこだよ、ほんと。
帰り道、ひとりで反省会。理屈はぜんぶ揃ってるの。「行動あるのみ」「素直になりな」「こわさは本気のサイン」。教科書なら満点よ。
でも、実技がゼロ。心と体がバラバラ。
でね、わたしが今のあなたに言えるのはこれ。動けなくてもいい、まず「動けてない自分」を責めないこと。恋に臆病になるのは、ちゃんと本気だからなんだから。そこ、減点ポイントじゃないよ。
夜、布団の中で颯太のLINEをもう一回見た。「今日のみゆ、ちょっと変だったぞ?」って。バレてるし。
でもね、不思議とちょっとだけ笑えたの。あんなに人の背中ばっか押してきたわたしが、今度は自分の番で立ち止まってる。なんかさ、これも悪くないかもって。
「一緒に前を向こう」――いつも誰かに言ってきたこの言葉。今度はこれ、自分にかける番なのかもしれない。
……まだ、もうちょっとだけ、心の準備させてね。
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― 沙織(恋ことば)






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