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前回、練習帰りの颯太を見てなぜか胸がドキドキ。いつも通りに笑えなくなって、別れたあともずっと鼓動がうるさかった。「なんなのこれ」って、生まれて初めて自分の心の前で立ち止まっちゃったんだよね。
で、今日はその続き。あのね、わたし、まさかの展開を迎えることになるの。
放課後、親友のちなとカフェにいた。アイスティーのストローをくるくる回しながら、わたしはなんとなく、ほんとになんとなく、颯太の話をしてた。
「昨日さ、颯太が汗拭いてる姿見て、なんか心臓ヘンだったんだよね。風邪かなー?」
ちなはスプーンを止めて、じーっとわたしを見た。その目、なんか審判みたいだった。
* * *
「みゆ。それ、完全に恋じゃん」
一刀両断。ばっさり。容赦なし。わたしは「は!?」って声がひっくり返った。
「ちがうちがう、相手颯太だよ? 幼なじみだよ? いちごミルク勝手に買ってくるアイツだよ?」
「うん、そのアイツの顔、いま思い浮かべてるでしょ」
……浮かんでた。くやしいくらいに、くっきり。
否定しようとすればするほど、颯太の笑った顔がふわっと出てくる。わたし、こんなの初めてで、もう手が止まった。
* * *
ねえ、これ、あなたにも覚えあるかな。「ちがう」って言うために相手を思い浮かべた時点で、もう答え出てるやつ。これ、ほんとあるある。
わたしはこれまで何十人の友達に言ってきた。「好きかどうか迷うってことは、もう好きなんだよー」って。なのに自分はその基本の「き」で大渋滞してた。
「うわ、わかる〜!じゃないわ、これ。完全に自分のことだわ……」
ちなはちょっと笑って、でも優しい声で言った。「みゆはさ、人の恋はプロなのに、自分のはド素人だよね」
ぐさっ。でも当たってる。応援団長、まさかの新人研修からやり直しである。
* * *
家に帰って、ベッドにダイブした。スマホには颯太から「明日数学のノート貸して〜」って、いつも通りの軽いLINE。
いつもなら「しょうがないなー」で即返信なのに、今日はその一文を三回読み返した。スタンプひとつ選ぶのに五分かかった。なにこれ、わたしポンコツすぎない?
胸の奥が、ぎゅっとして、ふわっとして、忙しい。ああ、これが「好き」か。認めた瞬間、なんか急に世界の色が変わった気がした。
でも同時に、こわくもなった。だって颯太は幼なじみで、ずっと「ただの颯太」で、いまさら好きとか言ったら……関係、壊れちゃうかもしれない。
これね、あなたに伝えたいんだけど。気持ちに気づいた日は、無理に決断しなくていいの。「あ、わたし好きなんだ」ってまず認めるだけで、その日は満点。動くのは、心が落ち着いてからで大丈夫、大丈夫!
* * *
結局その夜、颯太には「いいよ、明日持ってく」とだけ返した。たった七文字に、なんでこんなにドキドキしてんだろ。
窓の外、月がやけにきれいで。わたしはひとりごとみたいにつぶやいた。「わたし、颯太のこと、好きなんだ……」
声に出したら、なんだか急に恥ずかしくて、布団に潜った。顔、たぶん真っ赤。
これまで人の背中はバシバシ押してきたのに、いざ自分の番になると、一歩がこんなに重いなんて知らなかった。応援団長、いま、自分の応援だけできてない。
でもね、これがわたしの恋の、ほんとの始まり。ポンコツでも、こわくても、ちゃんと前を向く番がきたんだ。……まだ向けてないけど。ね、やってみよ?って、自分に言える日まで、もう少し。
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― 沙織(恋ことば)






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