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こんにちは、みゆです。わたしね、人の恋を応援するのは得意なんだ。後輩のさやかちゃんの恋も、バッチリ成就させちゃってご満悦!
そんなわたしの隣には、いつも当たり前みたいに颯太がいる。幼なじみで、いちごミルクをさりげなく差し出してくるような、ほんと面倒見のいいやつ。
でもね、その日――わたしの心臓が、ちょっとだけおかしくなったの。
* * *
その日はサークルの練習を、グラウンドの隅っこから眺めてた。颯太がサッカーやってるとこ、何百回も見てきたんだよ? ほんと、見飽きるくらい。
だからこれも、いつもの風景のはずだった。ボール追いかけて、汗だくになって、笑ってるやつ。それだけ、のはずだった。
練習が終わって、颯太がこっちに歩いてくる。Tシャツの裾でぐいっと額の汗を拭って、前髪をかきあげた、その瞬間――
ドクン。
……え? 今の、何?
* * *
「みゆ、待たせた。今日暑くね?」
颯太がいつも通りに笑いかけてくる。なのにわたし、なんでか目を合わせられないの。視線がスーッと地面に落ちてく。
「う、うん。暑い、ね」
声、上ずってる。何これ。わたし、こんなキャラだっけ?
颯太が首をかしげる。「どうした? なんか変だぞ」
「変じゃないし! ぜんぜん、いつも通りだし!」
いや、いつも通りじゃないのは自分でも分かってる。心臓がさっきからうるさくて、颯太の汗のにおいすら、なんか妙に意識しちゃってさ。
* * *
颯太がペットボトルの水をぐいっと飲む。喉が動くのを、なんでわたし見ちゃってんの。やめて、わたしの目。
「ほら、みゆも飲めよ。熱中症なるぞ」
差し出されたタオルを、わたしは反射的に受け取った。颯太のタオル。あったかい。……って、何考えてんの、わたし!
「あ、ありがと。でもわたし日陰だったから平気だよ、大丈夫、大丈夫!」
早口で返して、タオルを押し返す。颯太は「変なやつ」って笑った。その笑い方が、今日はやけに胸に刺さるんだよね。
ここでひとつ、あなたに言っておきたいんだけど。「いつもと同じ景色なのに、急に胸がざわつく」――それ、心がもう答えを知ってるサインだったりするよ。頭が追いつくのは、いつだって後からなの。
* * *
帰り道、颯太と並んで歩いた。いつもの道、いつもの距離。なのに今日は、肩がぶつかりそうになるたびにビクッてしちゃう。
「みゆ、さっきから挙動おかしくね? 熱でもあんの?」
颯太がひょいって、わたしのおでこに手を伸ばしてきた。やめて、近い、近い!
「な、ないない! 平熱平熱!」
わたしは一歩飛びのいた。颯太は「だから変だって」ってまた笑う。その距離感、昨日までは何とも思わなかったのに。
幼なじみって、距離が近いのが普通なんだよ。手も触れるし、肩も組むし。でも今日のわたしは、その「普通」にいちいち反応する、別人みたいなわたしだった。
* * *
分かれ道で颯太が「じゃあな、ちゃんと水分とれよ」って手を振った。その背中を見送りながら、わたしは胸を押さえてた。
まだドキドキしてる。颯太が見えなくなっても、まだ。
「……なんなの、これ」
ひとりごとが、夕方の空気に溶けてく。いつもなら、こういう「よく分からない気持ち」は友達のことだったのに。今日は、自分のことなんだよね。
恋の応援団長のわたしが、初めて自分の心の前で立ち止まってる。背中、押してあげる側だったのに、押される側の気持ち、ちょっとだけ分かっちゃったかも。
ねえ、もしあなたが今、「これって何の感情?」って胸に手を当ててるなら――無理に名前をつけなくていいよ。まずは「あ、わたし今ざわついてるな」って気づいてあげるだけで十分。答えは、ちゃんと後からついてくるから。
……颯太の顔、まだ浮かんでる。やばいな、これ。次回、ちょっと大変なことになる予感、するんだよね。
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― 沙織(恋ことば)






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